不動産のお話60(斜線制限:道路斜線制限②緩和ルール其の一)

斜線制限は、高さを規制するためのルールです。ある点から斜めに線を引き、その範囲に建物が収まるように設計します。
斜線制限は、「道路斜線」「隣地斜線」「北側斜線」の三種類です。
道路斜線は、基本的にどこでも適用。
隣地斜線は、低層・田園以外適用。
北側斜線は、低層・田園・中高層エリアのみ適用。
今回は、前回に引き続き、斜線制限のうち「道路斜線制限」についてお話しできたらと思います。


敷地の条件や周辺環境によって、道路斜線制限が緩和されます


今までお話ししたのは道路斜線制限の基本的なルール。それに加えて、道路斜線制限にはいくつかの緩和ルールがあります。どんな緩和があるのでしょうか。見ていきましょう。


道路と敷地の高低差緩和


敷地の地盤面が前面道路よりも高い場合、建築可能な範囲が小さくなってしまいます。そのため、高低差が1m以上ある場合に使えるのが高低差緩和です。「高低差から1mをマイナスした数値の1/2」高い位置を起点にして、斜線制限が適用。下の図のように、道路斜線の起点が高くなることで建てられる建物の高さの上限が高くなります。

例えば、高低差が2.2mある場合の計算は
(2.2m―1m)÷2=0.6m
前面道路が0.6m高い位置にあるとみなされて、道路斜線の起点が決められます。


セットバックによる緩和


前面道路の境界線から、建物を後退(セットバック)させて建てた場合、道路斜線制限が緩和されます。前面道路の境界線から建物までの最少距離(後退距離)の分、道路斜線制限の起点が前面道路の反対側の境界線から外側に移動します。下の図で見ると、道路斜線の起点が遠くなることで敷地の上を通る道路斜線が高い位置になり、緩和部分の範囲にも建物がつくれることになります。

建物から出ている屋根の軒や庇、バルコニーがある場合、セットバックは外壁までの距離ではなく、せり出した部分までの距離になるので注意が必要です。なお、外壁から飛び出していても規定の条件を満たす物置や車庫、玄関ポーチ、門、塀などは後退距離内にあってもセットバックの緩和に影響しません。

セットバックとは:「建築基準法では、家を建てるための土地には接道義務があり、4m幅以上(地域によっては6m幅以上)の道路に2m以上接していなければなりません

*中心後退:道路の向かい側が宅地の場合は道路の中心線からそれぞれが水平線で2mセットバックすることになります。 例えば道幅が3mであれば、中心線から境界線までの距離が1.5mなので、お互いに0.5m下げることになります。

*一方後退:道路の向かい側が崖、川、線路等のとき、セットバックの条件が異なってきます。このような場合は向かい側の境界線を動かすことはできないので、建物のある側だけで4mの道幅を確保することになります。例えば道幅が3 mならば、境界線を1 m下げなければなりませんので気を付けましょう。


公園による緩和(水面緩和)


前面道路の反対側に公園や広場、線路敷き、川などの水面がある場合、これらが道路の採光や通風の確保に効果があることから、道路斜線に緩和措置があります

公園などの反対側の境界線が、前面道路の反対側の境界線とみなされることで、道路斜線の起点が、さらに向こう側に移動することになり、建物を建てられる空間が広がることになります。

≪要点≫
道路の採光や通風が確保されるよう建築基準法で定められているのが道路斜線制限
用途地域や容積率、道路幅員などで道路斜線の角度や適用距離が違ってくる
条件によってさまざまな緩和措置が適用され、家の規模や形の自由度が大きくなる

道路斜線が緩和になるルールが他にもあります。次回もいろいろな道路斜線の緩和ルールについてお話しできたらと思います。

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