今日の本195(あるキング)
おはようございます。朝から空気がとても冷たくて、気温を見るとあまりに低かったので驚きました。乾燥もしていますので、できるだけ加湿をして、暖房を上手く使うようにしましょう。そして、定期的な換気も忘れずにしてくださいね。
今日の本は、伊坂幸太郎さん、あるキング、です。野球の王になるべくして生まれた男の子のお話です。
#kokkoさんの今日の本 #伊坂幸太郎 #あるキング
【本当の”天才”が現れたとき、人は”それ”をどう受け取るのか】
仙醍キングスのあの弱さは尊敬に値するよ。
仙醍キングスは弱いことに意味があるんだ。
負けっぷりを楽しむのも娯楽の一つだ。
仙醍キングスは勝った負けたではなくて、
そこにあることが大事なのだ。
弱小地方球団、仙醍キングス。
弱くてもコアなファンは定着している。
その熱烈なファンである二人の間に男の子が生まれた。
彼が生まれた日はキングスの英雄が亡くなった日だった。
「将来、この子は仙醍キングスで活躍する男になるの。
だから、王という漢字がつかないのはおかしいと思ったの」
つかないのは、世の摂理としておかしい。
「将来、キングスに求められる存在なのだから、
王に求められる、と書いて、王求(おうく)はどうだろう」
二人は悩むことなく、その名を決定した。
王に求められる、並べると「球」。
まさに野球界を背負っていく名前だった。
王求は幼くしてその才能を開花した。
両親は歓喜し、さらに異常ともいえる情熱を彼にそそぐ。
すべては「王」になるため。
ひまわりの種にひまわりを目指してるんですか?って聞きます?
ひまわりになっちゃうのよ、絶対に。
王求は王になるために産まれてきたの。
だから王にならないわけがないじゃない。
罪悪感とか、恐ろしさとか、不安とか。
心に抱えているもやもやとした気持ち。
そういうものを全部吹っ飛ばす。
空というか宇宙の彼方まで、飛ばしてしまう。
ホームランとはそういうものだ。
悲しみはどんどん、人から人にうつっていく。
だけど、王様にはうつらない。
悲しみも、苦しみも。
だから王様が全部、ごっそり救ってあげて。
そう、約束した。
自分がホームランを打つことで救える心がある。
だから自分はホームランを打つのだ。
打率は驚異の9割。
失球以外のほとんどがホームランだ。
だが、彼の華々しい活躍は短く儚かった。
しかし、その記憶は誰かに引き継がれる。
彼が散った瞬間に。
小さな新しい生命に。
彼が生まれたときと同じように。
引き継がれる。
王求の本塁打が雨雲に満ちた夜空はおろか、
ありとあらゆる不安を吹き飛ばした。
君が出てくる場所は穏やかで和らいだ風に満ちている。
次はキミの番だ。
みんなが待っている。
心配するな。早く出てこい。
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