不動産のお話22(バリアフリーとユニバーサルデザイン)
最近の住宅事情では、「バリアフリー住宅」というのが標準になってきています。バリアフリーとはどういう考え方なのでしょうか?またユニバーサルデザインとの違いは?本日はその二点の違いについてお話しできたらと思います。
バリアフリーとは
バリアフリーとは、「高齢者や障害者が社会生活を送るうえで、障壁となるものを取り除く」という考え方です。
具体的な例として、階段や通路への手すり設置、階段昇降機の設置、段差に対してのスロープ設置などが挙げられます。日本では、法律で定められた基準を施設計画に取り入れることで、普及してきました。また、高齢化が進んだことも積極的にバリアフリー化が行われてきた理由です。このことから、バリアフリーは障害者や高齢者にとって、外出機会を増やすための有効的な手法として認知されています。
しかし、一部のバリアフリーが、障害者や高齢者への特別扱いを助長させていることが問題となっています。それは、障害を強調するバリアフリー(車いす昇降機などの特別扱いで注目を受けるなど)や、障害を隠すバリアフリー(他人と全く違う移動経路など)です。
ユニバーサルデザインとは
ユニバーサルデザインとは、障害のある人にとってのバリアを解消するのではなく、最初からバリアを生まないようにする。この考え方から生まれたのが、ユニバーサルデザイン(以下、UD)です。UDとは「すべての人々に対し、その年齢や能力の違いに関わらず、可能な限り最大限に使いやすい製品や環境のデザイン」のことです。
具体的な例として、エレベーターの設置、ピクトグラムや色彩(コントラストが大きいもの)を用いた情報サイン、自動ドアなどが挙げられます。UDがバリアフリーと大きく異なる点は2つあります。
①バリアフリーは一部の人が対象であるのに比べ、UDはすべての人が対象であること。
②バリアフリーのように特定の基準がなく、「ここまで行えばUD」という明確な答えがないことです。
しかし、すべての人のニーズに対応することは不可能に近いことです。そこで、UDでは試行錯誤の中からよりよいものを『比較』して検討を行います。実際、施設をUD化する際は、障害のある当事者を含めた利用者とともに検討していく必要があります。UDは「すべての人々に対し可能な限り使いやすいデザイン」のことです。広い視点でみると、バリアフリーはUDの一部でもあります。
しかし、一部の障害を強調する・隠すといったバリアフリーによって、目的地は一緒であるにもかかわらず、ともに外出している人と途中で同じように行動できなかったら…自分の大切な人を思い浮かべてみてください。UDの考えでは、目的地まで誰もが同じ道のりを歩むことができます。
ユニバーサルデザインの七原則
1.誰でも同じように利用できる「公平性」
公平性とは「身体的、心理的に使う人を選ぶことなく、誰でも公平に操作できること」です。
例えば「自動ドア」や「手すり付きの階段」「段差のない歩道」などが当てはまります。歩いている人、車いすに乗っている人、ベビーカーを押している人など、どんな人でも同じように使うことができます。
2.使い方を選べる「自由度」
自由度とは「使う人の能力や好みに合わせて、使い方を選ぶことができること」です。
例えば、「多機能トイレ」は様々な用途で使えるように複数の機能がついています。「高さの違う手すりやカウンター」は、背の高さなどに合わせて選ぶことができます。また、「階段・エレベーター・エスカレーターの併設」は、状況によって手段を選ぶことができます。
3.簡単に使える「単純性」
単純性とは「使い方が簡単で直観的にわかること」です。使う人の知識や経験の違いにかかわらず、直感的に理解できることを指します。
例えば、シャンプーとリンスのボトルには、凹凸があるのをご存知でしょうか。これは、視覚障害のある方が触っただけでどちらなのかが直感で分かるような工夫です。「電気のスイッチ」や、「説明書がなくても使える家電」なども直感的に使うことができます。
4.欲しい情報がすぐに分かる「明確さ」
明確さとは、「使う人にとって、その情報が理解しやすいこと」です。何を伝えているのかが誰にでも分かることを指します。
例えば、電車内の案内表示で次の駅を伝える際、様々な言語やひらがなで書かれています。そのため、言語や理解度の違いにかかわらず理解することができます。また、伝達手段も、音声案内・点字・文字での表示などさまざまな方法があることで、全ての人に情報を伝えることができます。
5.ミスや危険につながらない「安全性」
安全性とは「使用時に事故の心配が無く、安全であること」です。
こちらは危険防止機能を搭載している家電などが当てはまります。例えば、ほぼ全ての電子レンジは使用中に開けると止まるようにできています。また、「失敗しても元に戻れる」ということも含まれます。操作画面の「戻る」のボタンは、安心につながります。
6.無理なく使える「体への負担の少なさ」
体への負担の少なさとは「無理な姿勢を取ることなく、かつ少ない力で使用できること」です。
こちらは「水道のレバー」や「レバーハンドル式のドア」などが当てはまります。このレバーハンドル式のドアノブですと、レバーを下げるだけで開閉できます。握って回すタイプのドアノブと比べると、非常に体への負担が少なくなっています。
7.使いやすい広さや大きさ「空間性」
「優先駐車スペース」「多機能トイレ」という空間や、「手のひら全体で押すことができる電気のスイッチ」など製品の大きさが当てはまります。
バリアフリーの考え方からユニバーサルデザインが生まれ、誰もが使いやすい、誰にも優しい、そういう空間づくりが全国で始まっています。「誰かのためだけ」ではなく「すべての人のため」、そういう見方が出来るようになればいいですね。
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