今日の本219(翳りゆく夏)

おはようございます。今日は祝日ですが、朝からあいにくの雨です。「おうち時間」を楽しむ方法は、コロナ禍になってから、各御家庭いろいろと工夫されていることと思います。おうちの中でも楽しい休日をお過ごしください。
今日の本は、赤井三尋さん、翳りゆく夏、江戸川乱歩賞受賞作です。
#kokkoさんの今日の本 #赤井三尋 #翳りゆく夏

【まさか貴方が犯人だったなんて】
20年前、ある病院から新生児が誘拐された。5000万円の身代金は両親ではなく病院へ要求された。病院は要求を飲み身代金を受け渡し、警察の追随の結果犯人は事故死し、身代金も返ってきたが、新生児が両親のもとへ返ってくることはなかった。死人に口なし。すでに時効を迎えた事件だ。

「誘拐犯の娘が新聞社の記者に内定」
そんな暴露記事が他社ででた。
親が誰であろうと関係ない。
あくまで個人を採用する、内定は本人の実力だった。

「重大犯の娘であっても、何の偏見もなくよく採用した。
 だが当社に誘拐犯の娘など入社するはずがない」
そんな、社主の矛盾した言葉から始まった。
20年前の誘拐殺人事件をもう一度洗いなおせ、と。
誘拐犯の無実を証明せよ、と。

調べまわっていると、違和感が広がっていった。
まさか共犯者がいるのか。いや真犯人がいるのか。

腑に落ちない。

どの赤ん坊でもよかったのか。
なぜ新生児室のど真ん中にいた子供をさらったのか。
扉のすぐ近くの赤ん坊の方が自然ではないか。
赤ん坊の足には名前と血液型が記入されたバンドが巻かれている。
その子でなければならない理由があったのか。

腑に落ちない。

ある夫婦からとつぜん奪われた赤ん坊。
失った子供の代替としての大金を得た。
それを使うことができない夫婦の心情。
自分は軽く考えていた。
もう20年もたつのだからと。

かわいい音色をたてて回り始めそうなメリーゴーランド。
木製の赤ちゃん用ベッド。
ミッキーの絵柄のベビー箪笥。
ウサギやネコのぬいぐるみ。
組み立て式の小さな滑り台。
色とりどりの積み木。
そしてベビーチェアには手垢で汚れた赤ちゃん人形。
その人形の前には、温かい料理の入った小皿とスプーン。

自分の目に飛び込んできたのは、時の止まった部屋だった。
夫婦は20年もの間、この部屋で子供を育て続けた。
成長することもなく、喋ることもなく、反応することもない。
人形をあやし、食事を与え、
滑り台を滑らせ、積み木で遊ばせていた。
あの日以来、夫婦の時計は止まったままだった。

自分が目にした六畳間の光景は、
かつてない息苦しさで、
自分の両肩に、ズシンと重くのしかかってきた。

20年。
なんという長い時間だろう。
自分は何かできるのだろうか。
結局何もできないのだろうか。

「事実」を超えた「真実」
実話以上のリアリティがそこにある。
登場人物の一人一人に血が通っている。
そこは非現実のはずなのに、妙なリアリティに包まれる。
あなたは物語に引き込まれ、そこにあるものを見るだろう。
まさか、貴方が犯人だったなんて。
夢にも思わない。
驚き、そして、、、その結末を素直に喜べるだろうか。

ドラマ化されています。

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