今日の本218(あずかりやさん)

おはようございます。昨晩から今朝にかけて、肌寒かったので、毛布をまた出しました。出したりしまったり、大変です。体調管理にお気を付けください。
今日の本は、大山淳子さん、あずかりやさん、です。「猫弁」シリーズで人気の作家さんで、猫が出てくる作品が多いです。このお話にも猫が出てきます。
#kokkoさんの今日の本 #大山淳子 #あずかりやさん

【一日百円でどんなものでもあずかります】
店先にかかる暖簾は、藍色で白抜きの「さとう」の文字が入っている。
東京の下町の商店街のはじっこにある、こじんまりとしたお店。
あずかりもの・さとう。

あずかりやさん。
奇妙な商売なだけに、隙間産業といいますか、ライバルがおらずなんとか続いています。お客様に「あずかって」といわれたものをあずかり、それがどんなものであろうと ”一日百円” 。最初に期限を決めて前払いしてもらい、期限を過ぎても取りに来なかったら、あずかりものはいただきます。売れるものは売り、使えるものは使い、処分すべきものは処分いたします。

店主は、目が見えません。
小さい時に事故に遭ってから光を失いました。
その原因を作ってしまった母親は出ていきました。
そして父親もここをでていき、
17歳の時に一人ぼっちになた店主は、
ひょんなことから、あずかりやさん、をはじめたのです。
目が不自由なことも幸いしたのでしょう。
「あずかりもの」を読んだり見たりできませんし、
ましてや、お客様の顔を見ることもできません。
お客様からしたらプライバシーは守られ、安心して物を預けることができるという寸法です。

捨てるために預ける人もいます。
そういう人はたいてい一日分の百円を支払います。
でも本当に一日だけ預けて取りに来る人だっています。

あるかないかの可能性のために店主はここで待ち続けます。
あずかりやさんは、待つのが仕事。
ここは、いつまでも変わらず、待っていてくれる場所なんです。
何ごとにも受け入れてくれる店主がそこにはいます。

お店を訪れる人たちは様々な事情を抱えて「あるもの」を預けます。
何も言わずに預けていく人。
堰を切ったように事情を話して預けていく人。
店主と話をしているうちに預けるのを辞めた人。

店主は点字の本を読みながら、今日もお客を待ち続けます。
今日はどんなお客様がどんなものを預けに来るのでしょう。

「あずかりもの」にはひとつひとつ物語があり、
「あずかりもの」にこめられた想いもあるのでしょう。
そんな物に込められた優しい物語たちをお話いたしましょう。

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