今日の本95(透明カメレオン)

おはようございます。昨日の卒業式はいかがでしたでしょうか?一生に一度、子どもの晴れ姿を見て涙した親御さんもいらっしゃるかと思います。晴れていいお式だっただろうと思います。良かったです。
今日の本は、道尾秀介さん、透明カメレオン、です。「月と蟹」にて直木賞を受賞。主演阿部寛さんで、「カラスの親指」が映画化されているので、そちらは知っている方もいらっしゃるかと思います。

#kokkoさんの今日の本 #道尾秀介 #透明カメレオン

透明なカメレオンを見たことがありますか?カメレオンは壁や床の色とおなじ色になって、隠れてしまいますね。ある男の子が家にカメレオンを飼っているというので見に行ったんだけれども、見つけられなかったんです。隠れるのがうまいから中々見つからないんだよ、と言われたけれど、本当はいなかったんだんじゃないかな。でも僕は信じることにした。僕も透明カメレオンを飼うことにした。心の隙間を埋めるために。でも、透明カメレオンはいつの間にかいなくなっていた。。。あのカメレオンをもう一度飼いたいと、大人になってから何度か思った。それはなかなか難しかった。見えるものしか見えなくなってしまったのは、いつの頃からだろう・・・。
【今夜も僕は世界をつくる。ほんの少しの嘘と、願いを込めて】
僕は深夜のラジオのパーソナリティだ。ラジオは声だけで世界をつくる。だからよく勘違いされるんだけれども、声がいいからと言って見た目がいいとは限らない。素敵な声の持ち主が、とても美男子とは言えない顔をしていて、なまっちろい肌の中肉中背で、分厚い牛乳瓶底眼鏡をかけていて、髪の毛がもさもさで、来ているものも垢ぬけない・・・・からといって、いったい誰に迷惑がかかるというのだろう、僕が何をしたというのか・・・でも誰もが僕の声と見た目のギャップにものすごくびっくりするんだ。
わかってる。僕は自分の容姿に自信がない。でもね、だからこそ放送中は楽しくしゃべれるんだ。僕が持っている唯一の長所だけを披露して、あとは隠しておけるから。生放送なんて本当はすごく怖いんだ。喋ったことが、その瞬間、電波になって飛んでいくから。何か間違ったことを言っちゃったとしても、慌てて追いかけて捕まえる事なんてできないから。それでも堂々と語らなければならない。それが大切で、たとえ嘘でも誤魔化しでも、堂々としゃべれば本当になる。事実より事実になる。僕はそう信じてる。
僕を支えてくれたみんなの気持ちに報いたかった。だから僕は願うことにした。それまでの自分を探してラジオのチューニングを合わせ、心の中のすべての声を、楽しくて面白かしいものに変えてみた。みんながつくってくれようとしている新しい世界を、この足で歩いてみることにした。足元は透明で、とても怖かったけれど、僕は透明カメレオンを飼っていたことがあるから・・・長年付き合ってきたラジオの電波だって目には見えないのだ。
でも君が突然現れて、それがきっかけでみんなでドタバタやってたら、喋ってる声も内容も、だんだん本当になってきたんだ。みんなが新しく作ってくれた世界に、この手で触ったり歩いたりできるようになってきたんだ。
嘘の世界をつくって、その中に入り込んで、つらい現実を遠ざけようとするのはわかる。僕みたいに何も起きなかったんだていう嘘で自分を守るのも、君みたいに事実よりももっとつらい嘘で身を固めるのも、きっと同じことだ。
大切な人はどうしていなくなってしまうのだろう。どうして急に遠くへ行ってしまうのだろう。誰のところにも来るはずの明日が、なぜその人のもとへは来なくなってしまうのだろう。嘘なんてつきたくない。目の前にある本当の景色を見ていたい。でも、そこには大切な人がいない。いくら探してもいない。いくら探してもいないから。
ラジオの電波をつかって、知り合った仲間のそれぞれ抱えてる事情を、哀しすぎる現実を、僕はほんの少しの嘘と願いを込めて、新しい世界をつくろうとした。今日も電波に乗せて、この声を届けよう。
ほんの少しの嘘と願いを込めて。

映画化されたカラスの親指。阿部寛さん主演。

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