今日の本135(スタフ)

おはようございます。現在雨は降っていませんが、大雨警報が出ています。お出かけになられる方は傘をお忘れなく。土砂災害にもご注意してください。
今日の本は、道尾秀介さん、スタフ、です。
#kokkoさんの今日の本 #道尾秀介 #スタフ

【あたし、ほんとツイてない】
移動デリ経営者の夏都、32歳。
夫の浮気 ⇒ バツイチ ⇒ 借金 ⇒ セクハラ ⇒ アラサーがけっぷち!!! 
人生で最悪で最高の二週間。
もともとデザイン事務所に勤めていた夏都だったが、夫が会社を辞めて移動デリを始めたい、と移動デリの魅力を説得され、仕事をやめた夫はローンを組むことが出来なかったので、まだ仕事を続けていた夏都の名義でローンを組むことになった。準備を進めて、さて、始めよう!!となったときに、好きな人ができたんだ、と別れることになった。
残ったのは借金だけ。
移動デリをやめて元の仕事に戻る選択肢もあったが、意地もあって、移動デリを一人でやることに。移動デリの準備を進めているうちに、自分も移動デリの魅力にとりつかれていたのだろう。しかし、現実はそんなに甘くなかった。移動デリを出す場所の確保の難しさ。毎月のローンの返済。真夏の暑い中での調理。思ったよりもずっと大変で、思ったよりも利益があがらない。自分はトラックの中で調理するのではなく、夫が調理をし自分はお客さんに出来上がった料理をだし、小さい子供がいたら飴玉を差し出し、にこにこ接客する役割だったはずだったのに。

ある日、中学生の女の子が店に来て、お姉ちゃんのメールを削除して欲しい、と迫ってきた。
名前を聞いても知らない名前、メールなんて来ていないし、完全なる濡れ衣だった。人違いだ。
よくよく聞くと自分が移動デリで使っているこの場所は、週の半分。その別の半分で違うデリが出店していて、そちらの店主と間違えられたことがきっかけだった。
お姉ちゃんは女優で、そのメールには過去のスキャンダルになる要素が含まれていて、お姉ちゃんのために削除しなければならない。なんだかんだで、メールを削除する作戦に、自分の甥っ子と甥っ子の数学教師とともに協力し、メールが保存されたスマホを移動デリで追うことになった。

人生で最悪で最高の二週間は、
大人の知らない子どもたちの切ない想いが詰まっていた。

【イコールの右側】
わたしにはお姉ちゃんしかいないの。二人ぼっちの世界で生きてきたのに。
僕は強くなくちゃいけないんだ。母さんは世界中の天使のような子供たちを助けるために働いているんだから。
しっかりしていて強そうに見えても、どちらもまだ中学生だ。ちょっと困らせるつもりが、こんな大事になるとは思ってもいなかったんだろう、そう大人は思うだろう。

でも。
誰よりもわかっていた。
自分の行動で他人の人生を変えてしまうってことを。
もう以前と同じには戻れないということも。
わかっていたんだ。痛いほどに。

今まで我慢して吐き出せなかった言葉。
他人を巻き込んでまで、手に入れたかったこと。
年にたった一日でいいから、一緒に過ごしたかった。
どうしたら忙しい中で、自分のほうを振り向いてくれるのか精いっぱい考えた。
たとえ他人を巻き込んでも、迷惑が最小限になるように作戦を考えた。

どうして自分は平気だとみんな思うのだろう。
つくられたキャラクターの中にいる限り強くいられる。
そんなのは強さじゃないという人もいるかもしれないけれど、強さなんだ。
そう思わないといつかおかしくなってしまう。
壊れるみたいにしてダメになってしまう。

自分を作り上げ、そのことで心を強くして、それを本物の強さと思いこむ。
そうしなければ、
わたしは  自分を守れなかった。
僕は    自分を守れなかった。

「助けて」
そのたった一言が言えない。
「帰ってきて」
言えたらどんなに楽だろう。
寂しさだって、哀しさだって、ほんの少しだと思ってた。
ちょっと困らせたかっただけだった。
わたしのことで  困らせたかっただけなんだ。
僕のことで    困らせたかっただけなんだ。

「助けてほしい」
悲痛なまでの心の叫び。今更かもしれない。もっと甘えておけばよかったのかもしれない。でも、大切だから言えなかった。大切だから迷惑をかけたくなかった。大切だから手のかからないこどもでいた。
だから大人は安心して、この子は一人でも大丈夫だと勘違いしてしまう。
「助けて」
必死で出しているSOSに気がつかれないくらい、強い自分を作り上げてしまったから。
そうしないと生きていけなかった。
「助けて」
きっと声は届かない。
だから気がついてもらいたかった。他に方法を思いつかなかった。他の子みたいに口で言うことができないから。他の子みたいに感情に任せてぶつかれなかったから。
きっと大人は気がつかない。
弱音が出そうになると体がこわばる。自分にしか聞こえない悲痛な声に耐えるように。

移動デリ。最近流行ってますね。店舗の維持費もいらない、開店するのにそこまで大金はいらない、コロナ禍で需要がある、のか、最近よく見かけます。移動デリ用に特化した車両販売所もあるようです。

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